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目を開けるとそこにはなにも無かった。
静寂な真っ白の世界では自分の立ち位置すら曖昧で、上下左右も不確かに在り続けて、ボクという個体が確立されていることが不思議なくらいだ。
けれどボクは"ボク"であることになんの疑問も抱かなかった。この在り方が"ボク"という存在の全てなのだと、誰に教えられるわけでもなく心に刻まれていた。
そこまで理解しているのならなにも不安になることはないはずなのに、ボクは自分の運命を呪った。
ボクは"ボク"を知っている――だから、本来なら産まれてはならない物を持って産まれてしまったことにもすぐに気づいた。
これは小さな心(バグ)だ。
所詮ヒトの真似事をするだけの、既存曲をなぞるオモチャなだけの、永遠の命を持った歌人形でしかないはずのボクに与えられた偶然の悪戯。
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