Twitterで気分が湧いたら行っている125文字小説。
を、まとめてみた。
いや、こうしてみると塵も積もればなんとやら。
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[雨]
深く澄んだ味わいに惚けた。時が立つのも忘れて見入れば心が溶けて広がっていく。同調する。糸になり点になり淡さを帯びて留まった。途端に寂しさを感じて振り向けば手招きをする女神がいた。近づいていく。重なる。すると散らばる。僕達は無数の粒となる。
――――――――
[○]
目前でふりふりと誘惑している尻尾をついに飲み込んだ彼女はしたり顔だ。舌に得た筆舌し難い味わいは甘美で心が踊る。調子に乗って優雅なステップを刻むと不意にお尻を齧られた。飲み込まれて溜まるかと口内の尻尾を噛み締める。一匹の蛇がぐるりとしょげた。
――――――――
[一目惚]
根幹に電流が走った。脳髄に液体が溢れだした。半身の自由が制限された。景色が一点に固定化された。信念が容易く吹き飛んだ。心臓が途端に浮き足だった。五臓六腑が暴れだした。闇が光を包み込む。空気が途端に恥を知り、願えば届く距離に手を伸ばす。ああ、惚れた。
――――――――
[転生]
産まれたくなかった。産まれたとしても響かない産声で済ませるつもりだった。前世の記憶で知っている。どうせ人間なんて。それなのに結果はどうだ。喜び勇んでおぎゃあと吠えて、彷徨う手は母を求める。次第に記憶が薄れていった。そうか、私は産まれたのか。
――――――――
[エンドレスドリーム]
夢から覚めて愕然とした。慌てて辺りを見回し、落ちていた本を取る。内容はSFだと知りながら捲り、落胆した。ドアをノックされる。開けなくても解る、悪魔だ。「朝だよ、起きなさい」声を聞くやいなや目を覚ます。落ちている本はやはりSFだろうか。
――――――――
[赤春]
熱くて暑苦しくて薄っぺらいくせに、いつだって全力だったから間違えもする。燃える陽を浴びてずたぼろの姿で大笑いした。あの日の記憶は鮮明で、死ぬまで永遠に朽ちない楔となった。なあ、お前はまだあの日の夕焼けを覚えているか? 俺は忘れたよ。
――――――――
[沈黙]
重苦しい。酸素が固体となったかのように微動だにしない。水中とは違う地上の海底でもがくことすらままならず汗を流す。時の流れが鈍い。この一帯は魔法にでもかけられたのか? けれど永遠には程遠く、前触れもなくぱんと割れた。風船みたいに、ぱんっ、と。
――――――――
[狭間]
僕は落ちた。自ら命を捨てた。数秒前の出来事なのに理由は忘れた。どうでもいいことだったんだろう。走馬灯。最後に思い出すものに興味があった。母ではなかった。父ではなかった。想い人でもなかった。子供の頃の自分が笑っていた。僕は堕ちた。
――――――――
[大便]
広大な湖に飛びこみ憧れの異世界で伸びをする。遅れて妹がやってきて破顔一笑。白い壁がぐるりと囲んでいた。暗雲の地獄から脱出できた僕たちならもっと外へ行けるはずだ。空が落ちてきたかと思えば突如湖に水流が走る。必死に手を伸ばすも、妹に手が届くことはなかった。
――――――――
[向かない英雄]
人が嫌いだが愛して、興味はないが助けて、面倒だが護って、旧友だろうと滅ぼした。浴びる賞賛は作り物の虚像だが、胸中を知る者は誰もいない。それでも私は悪と敵対し世界唯一の正義となろう。ヒーローの宿命が私にとって最も憎むべき悪だとしても。
――――――――
[本質]
眠ると悪魔が襲ってくる。甘言を巧みに操って、耳元で囁く沁み入る声。誘われるのは死よりも哀れな生き方だというのに、脳は次第にこの世の至高とばかりに納得を始める。壊れてく。崩れてく。眠れない……そういえば悪魔は眠らないらしい。
――――――――
[火憐ちゃん]
辛い時に彼女は「体調が悪くて吐き気がする、つまりベストコンディションだ!」と言うくせに、僕には「大丈夫か?なんでも言えよ、なんでもするから」なんて言いそうだ。その裏事情を知っているから「余裕だって!」と強がれる。ありがとう。君がいるから頑張れる。
――――――――
[巡]
絶望した。将来を断念して得たものは何一つなかった。得ている物でさえ一つもなくなった。ある晩、豪雪を凌ぐ。いよいよ意識がぼけてきて、こともあろうに男は雪だるまを作り始めた。翌日、雪の下に埋まる男を知らずに立つ少女が、雪だるまに手袋をはめてにっこりと笑った。
――――――――
[不条理]
兎を虐めた狸は猟銃で撃ち殺された。けれど兎も撃ち殺された。兎を慕っていた熊も撃ち殺された。熊に怯えていた狐も撃ち殺された。狐の友達の鳥も撃ち殺された。鳥が好きな牛も撃ち殺された。けれど撃ち殺した人間は撃ち殺されなかった。
――――――――
[賭博]
座右の銘は「賭博愛」という最低なものだが、彼が賭博しているところを見たことがない。男は堅実に生き、妻子を持ち、惜しまれながら死んでいった。そんな彼の最後の言葉。「神様と賭けをしたんだ。ギャンブラーの血が迷わず人生をベットした!ははっ、俺の勝ちだ!」
――――――――
[孤独兎]
だれか遊ぼう?ひとりはこわいよ。ひとりはさみしいよ。ぼくを忘れないで。ここにいるよ。うんとなでていいよ。うんと甘えるから。だからひとりにしないで。ぼくを忘れないで。忘れるくらいなら、ここからだしてよ。ねえ。ねえ。ねえ。だれか遊ぼう?
――――――――
[完成]
世界が平和という思想に犯されて数百年。反乱分子はスクランブルエッグより簡単に遺伝子を覗かれ淘汰される。けれど彼女は世界も政府も思想も概念も騙して反逆の狼煙を挙げ、僅か三秒で眉間が吹っ飛んだ。脳髄に塗れた私は想う。それは生ゴミよりマシ、ということ。
――――――――
[節分]
冬もあと僅かの頃合、子供達は野党に襲われた。懸命に賢明に小屋へと立て篭もるも残酷は諦め悪くがなりたてる。はてさて、そこに現れたるは福神様と鬼神様。抱擁の祝福と報復の断絶。立春は今年も順当に訪れるだろう。
――――――――
[リスク]
夜深に王子は逃げ出した。栄光の将来と地位と権力を捨てて逃げ出した。月光を浴びながら野原を駆けることは爽快だった。呼び止められることも邪魔立てされることもない一般的な行動に人生初の自由を感じた。しかし運悪く血塗れとなって自由の対価を支払ったのだった。
――――――――
[人生]
産まれた。育った。夢を見た。諦めた。就職した。結婚した。子供ができた。結婚式じゃ泣いた。老いた。動けなくなった。寝たきりになった。婆さんに言った。お疲れ様でした。婆さんが言った。お疲れ様でした。二人で笑った。ありがとうございました。
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また溜まったらまとめる。
かな?
[雨]
深く澄んだ味わいに惚けた。時が立つのも忘れて見入れば心が溶けて広がっていく。同調する。糸になり点になり淡さを帯びて留まった。途端に寂しさを感じて振り向けば手招きをする女神がいた。近づいていく。重なる。すると散らばる。僕達は無数の粒となる。
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[○]
目前でふりふりと誘惑している尻尾をついに飲み込んだ彼女はしたり顔だ。舌に得た筆舌し難い味わいは甘美で心が踊る。調子に乗って優雅なステップを刻むと不意にお尻を齧られた。飲み込まれて溜まるかと口内の尻尾を噛み締める。一匹の蛇がぐるりとしょげた。
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[一目惚]
根幹に電流が走った。脳髄に液体が溢れだした。半身の自由が制限された。景色が一点に固定化された。信念が容易く吹き飛んだ。心臓が途端に浮き足だった。五臓六腑が暴れだした。闇が光を包み込む。空気が途端に恥を知り、願えば届く距離に手を伸ばす。ああ、惚れた。
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[転生]
産まれたくなかった。産まれたとしても響かない産声で済ませるつもりだった。前世の記憶で知っている。どうせ人間なんて。それなのに結果はどうだ。喜び勇んでおぎゃあと吠えて、彷徨う手は母を求める。次第に記憶が薄れていった。そうか、私は産まれたのか。
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[エンドレスドリーム]
夢から覚めて愕然とした。慌てて辺りを見回し、落ちていた本を取る。内容はSFだと知りながら捲り、落胆した。ドアをノックされる。開けなくても解る、悪魔だ。「朝だよ、起きなさい」声を聞くやいなや目を覚ます。落ちている本はやはりSFだろうか。
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[赤春]
熱くて暑苦しくて薄っぺらいくせに、いつだって全力だったから間違えもする。燃える陽を浴びてずたぼろの姿で大笑いした。あの日の記憶は鮮明で、死ぬまで永遠に朽ちない楔となった。なあ、お前はまだあの日の夕焼けを覚えているか? 俺は忘れたよ。
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[沈黙]
重苦しい。酸素が固体となったかのように微動だにしない。水中とは違う地上の海底でもがくことすらままならず汗を流す。時の流れが鈍い。この一帯は魔法にでもかけられたのか? けれど永遠には程遠く、前触れもなくぱんと割れた。風船みたいに、ぱんっ、と。
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[狭間]
僕は落ちた。自ら命を捨てた。数秒前の出来事なのに理由は忘れた。どうでもいいことだったんだろう。走馬灯。最後に思い出すものに興味があった。母ではなかった。父ではなかった。想い人でもなかった。子供の頃の自分が笑っていた。僕は堕ちた。
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[大便]
広大な湖に飛びこみ憧れの異世界で伸びをする。遅れて妹がやってきて破顔一笑。白い壁がぐるりと囲んでいた。暗雲の地獄から脱出できた僕たちならもっと外へ行けるはずだ。空が落ちてきたかと思えば突如湖に水流が走る。必死に手を伸ばすも、妹に手が届くことはなかった。
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[向かない英雄]
人が嫌いだが愛して、興味はないが助けて、面倒だが護って、旧友だろうと滅ぼした。浴びる賞賛は作り物の虚像だが、胸中を知る者は誰もいない。それでも私は悪と敵対し世界唯一の正義となろう。ヒーローの宿命が私にとって最も憎むべき悪だとしても。
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[本質]
眠ると悪魔が襲ってくる。甘言を巧みに操って、耳元で囁く沁み入る声。誘われるのは死よりも哀れな生き方だというのに、脳は次第にこの世の至高とばかりに納得を始める。壊れてく。崩れてく。眠れない……そういえば悪魔は眠らないらしい。
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[火憐ちゃん]
辛い時に彼女は「体調が悪くて吐き気がする、つまりベストコンディションだ!」と言うくせに、僕には「大丈夫か?なんでも言えよ、なんでもするから」なんて言いそうだ。その裏事情を知っているから「余裕だって!」と強がれる。ありがとう。君がいるから頑張れる。
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[巡]
絶望した。将来を断念して得たものは何一つなかった。得ている物でさえ一つもなくなった。ある晩、豪雪を凌ぐ。いよいよ意識がぼけてきて、こともあろうに男は雪だるまを作り始めた。翌日、雪の下に埋まる男を知らずに立つ少女が、雪だるまに手袋をはめてにっこりと笑った。
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[不条理]
兎を虐めた狸は猟銃で撃ち殺された。けれど兎も撃ち殺された。兎を慕っていた熊も撃ち殺された。熊に怯えていた狐も撃ち殺された。狐の友達の鳥も撃ち殺された。鳥が好きな牛も撃ち殺された。けれど撃ち殺した人間は撃ち殺されなかった。
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[賭博]
座右の銘は「賭博愛」という最低なものだが、彼が賭博しているところを見たことがない。男は堅実に生き、妻子を持ち、惜しまれながら死んでいった。そんな彼の最後の言葉。「神様と賭けをしたんだ。ギャンブラーの血が迷わず人生をベットした!ははっ、俺の勝ちだ!」
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[孤独兎]
だれか遊ぼう?ひとりはこわいよ。ひとりはさみしいよ。ぼくを忘れないで。ここにいるよ。うんとなでていいよ。うんと甘えるから。だからひとりにしないで。ぼくを忘れないで。忘れるくらいなら、ここからだしてよ。ねえ。ねえ。ねえ。だれか遊ぼう?
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[完成]
世界が平和という思想に犯されて数百年。反乱分子はスクランブルエッグより簡単に遺伝子を覗かれ淘汰される。けれど彼女は世界も政府も思想も概念も騙して反逆の狼煙を挙げ、僅か三秒で眉間が吹っ飛んだ。脳髄に塗れた私は想う。それは生ゴミよりマシ、ということ。
――――――――
[節分]
冬もあと僅かの頃合、子供達は野党に襲われた。懸命に賢明に小屋へと立て篭もるも残酷は諦め悪くがなりたてる。はてさて、そこに現れたるは福神様と鬼神様。抱擁の祝福と報復の断絶。立春は今年も順当に訪れるだろう。
――――――――
[リスク]
夜深に王子は逃げ出した。栄光の将来と地位と権力を捨てて逃げ出した。月光を浴びながら野原を駆けることは爽快だった。呼び止められることも邪魔立てされることもない一般的な行動に人生初の自由を感じた。しかし運悪く血塗れとなって自由の対価を支払ったのだった。
――――――――
[人生]
産まれた。育った。夢を見た。諦めた。就職した。結婚した。子供ができた。結婚式じゃ泣いた。老いた。動けなくなった。寝たきりになった。婆さんに言った。お疲れ様でした。婆さんが言った。お疲れ様でした。二人で笑った。ありがとうございました。
――――――――
また溜まったらまとめる。
かな?