大人「そうだね、君は妹さんを殺したね。殺したことを理解できているね」

男「はい。間違いなく僕は妹を殺しました。この手で殺しました」

大人「その手で殺したね。首を締めて殺したね」

男「はい。妹は僕の手の中で死んでいきました。だから僕が殺しました」

大人「殺した後に妹さんをバラバラにしたね」

男「はい。僕は妹をノコギリで切り刻みました。バラバラにしました」

大人「君は自分がどんなことをしてしまったのか解っているかな」

男「はい。殺人を犯しました。僕は犯罪者になりました」

大人「そうだね。君は妹さんを憎んでいたのかな」

男「いいえ、僕は妹を極々普通に愛していました。兄として。いや」

男「訂正します。僕は妹を極々普通に――愛しています」
男「僕と妹は仲の良い兄妹だったと思います。学校で起こったことを話したり」

妹『今日ね、クラスのBさんがA君と恋人同士になってたって事件が発覚してさぁ。いいなぁ、私もほしいなぁ、恋人』

男「並んでゲームをしたり」

妹『ちょっと兄ちゃんっ、手加減してよぉ。ショートカットしーすーぎ!』

男「一緒に映画を見たり」

妹『に、兄ちゃん、これ見たいんだけど一人じゃ見れないから一緒にお願い! ホラーは一人じゃ無理なのぉっ』

男「一緒に漫画を読んだり」

妹『見てよ兄ちゃんっ、この人腕長すぎ!』アハハ

男「一緒に買い物に行ったり」

妹『今日の晩御飯なんにするー? とりあえずピーマンは買わないけどねぇ』

男「色々なことを共有していました」

妹『兄ちゃん……あの、ね? いいや、なんでもないっ』


男『どうした?』

妹『ほんといいんだって、大したことじゃないから』

男『そうは見えないけどな。悩み事か? 兄ちゃんでよけりゃ相談に乗るぞ』

妹『いいっていいって! ほんと、いいって……』

男『そう言わずに、な?』ナデナデ

妹『うう……頭撫でるん反則だよ兄ちゃん』

妹『眠くなる……』トローン

男『いま寝たら夜眠れなくなるぞ』パッ

妹『あう……なんか損した気分』

男『それで、悩みは?』

妹『んん……えっとね』

妹『友達の話なんだけど、その友達、お兄ちゃんのことが異性として好きなんだって』


男『異性としてなあ。そりゃ大変だ』

妹『うん。いけないことだからずっと隠してるけど、辛いって言ってた』

男『祝福される恋ではないよなあ』

妹『や、やっぱりそうかな?』

男『周りからのイメージもあるだろうし、その子のお兄さんが受け入れてくれるかどうかもあるし……兄妹って異性だけど性別なんて超えた関係があるからなあ。俺とお前みたいに』

妹『……そうだね』

男『だから、もし告白したいっていうなら、俺はこう思う』

男『なにもかも捨てる覚悟があるのかどうか、だな』

妹『なにもかも捨てる覚悟……』

男『それぐらいの覚悟してないと、成功しようと砕けようと上手くいかないだろうからな』

妹『覚悟、か……』

妹『に、兄ちゃんっ』


男『どうした、改まって』

妹『え、っと……その……あのさ?』

男『うん』

妹『兄ちゃんって彼女いないんだよ、ね』

男『できるわけないだろ俺に彼女なんて』

妹『そんなことないよ! 兄ちゃん格好いいし、優しいし、面白いし、素敵だと思うよ!』

男『妹に褒められてもなあ』ハハッ

妹『……』

妹『……妹じゃ、だめ?』

男『え?』

妹『妹じゃ……彼女になっちゃだめ?』


大人「妹さんに告白されたんだ」

男「はい」

大人「嬉しかった?」

男「ただ戸惑いました。まさか妹がそんな目で僕を見ていたなんて思ってなかったので」

大人「普通はそうだね。でも君は……受け入れたんでしょ?」

男「はい」

大人「どうしてかな。君は妹さんを異性として見れてなかったんだよね?」

男「だから、です。付き合ったら異性として見れるのかなと考えました。僕は妹に告白されて戸惑って、妹をフることよりも受け入れたいと願うくらいには、妹を愛していますから」

大人「そっか」

男「でも……あの時フっていればあんなことにはならずに済んだのかもしれない。そう思うと、僕は……」

大人「君のせいじゃないよ、それは」

男「……」


妹『兄ちゃん! 一緒に寝よう?』

男『構わないけど、寝相悪いだろお前』

妹『兄ちゃんとだったらお行儀よく眠れるもんっ』

男『蹴飛ばすなよ?』

妹『頑張る!』


妹『兄ちゃん、寝た?』

男『まだ起きてる』

妹『ごめんね、こんな妹で』

男『なに言い出すんだよ突然』

妹『私が普通の妹だったらよかったのにね。兄ちゃんを異性として好きにならず、普通に過ごせてたらよかったのにね』

男『おいおい、俺はお前の告白を受け入れたんだぞ?』

妹『何年兄ちゃんを見続けてきたと思ってんの? 兄ちゃんが困ってることぐらい……わかるよ』

男『……そっか』

妹『でもごめん。私、それでも嬉しいんだ。兄ちゃんの彼女になれて、嬉しいんだ』

男『……妹』

妹『ん?』

男『……おやすみ』

妹『……うん、おやすみ』


大人「それから妹さんとの付き合いはなにか変わった?」

男「特に変わりませんでした。強いて言うなら、妹がところどころで女をアピールするようになったことぐらいで」

妹『みてみて兄ちゃん! この服可愛いでしょー』

男『ちょっと露出度高くないか?』

妹『そんなことないよー、って兄ちゃんどこ見てんの!? えっちだなぁ』

男『見てないって、そんなお子様体型』

妹『ひっどーい!』


男「それから一ヶ月が経ったある日、あれは起こりました」

大人「妹さんが拉致された日だね」

男「……はい」

大人「君は許せなかった」

男「はい。帰ってきた妹に無断外泊を怒ろうと思ってましたが、様子を見て察しました。妹はずたぼろでしたから」


妹『……ただいま』

男『お前泊まるなら一言ぐらいっ――どうしたんだ? なにがあったんだ!?』

妹『……なにも』

男『なにもってことはないだろ!? 服もずたずただし、その痣っ』

妹『……なにも、ないよ』

男『そんなわけ、ないだろうっ!』

妹『……もう、なにも、ないんだよ』

妹『う……ああっ……ああっ……うああっ』ポロポロ

妹『ごめっ、んね……兄ちゃんっ……うう……ごめんねっ』ポロポロ

男『……妹』ギュッ

妹『ごめんねっ……ごめん、ねっ……うあああんっ』


大人「妹さんは結局なにも言わなかった」

男「はい。それ以上は聞くこともできませんでした。妹はただ僕に謝り続けるばかりで」

大人「どうして妹さんが謝っていたか、解るかな?」

男「……解りたく、ありません」

大人「……そっか。それで君は妹さんになにがあったのかを突き止めて――復讐した」

男「はい」


男『おい、お前ら』

『あん? 誰だてめえ』
『んだガキ、ごら』
『待てって、話ぐらい聞こうぜ。で、なんだよあんちゃん』

男『ここ最近、女の子を傷つけた覚えはないか?』

『あん? っかはは!』
『ここ最近だ? ごら。何様だてめえ』
『ここ最近なあ。わからねえな、なんせ一日に一回は女の子傷つけまわってるからなあ! はっはっは!』

男『なんでお前らみたいなのが捕まってないんだか』

『そりゃ始めたのが二週間かそこらだしな。まあでも、お前みたいな奴は初めてだ。よくわかったな、俺らがやったって』

男『聞き回ったら一発だ。お前ら有名なクズだからな』

『あん? 殺すぞてめえ!』

男『それは無理だ』プシュー


『かっかはっんだっこれ!』

男『催涙スプレー、強化版。失明の恐れ有りを失明するようにしたり、まあ色々』

『なめんじゃねえぞごらあ!』

男『舐めたくはない』ビリビリビリ

『うぎゃああああああああああああ!』

男『高圧スタンガン、リミッター解除版。まだ死ぬなよ』

『躊躇ないなあ』ギラッ

男『躊躇? 刃物出すような奴に躊躇なんかしてられるか』

『でもどうする? 怖いだろ? 俺は簡単にお前を刺すぞ?』

男『対策はしてきた』ギラッ ギラッ ギラッ ギラッ ギラッ

『っ』

男『ナイフの使い方なんて知らないけど、何本もナイフ投げられて平気なのか? お前』ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ

『ひ、ひいっ』グサッ

男『おお、一個刺さった。一個刺されば充分だ。投げなかったナイフで刺せる』

『うああああああ!』グサッ

男『でも、死ぬなよ。お前らが苦しいのはこれからだ』

男『泣いても土下座しても許さない。殺してと言っても殺さない。このままずっと殺さない。腕も足も目もチンコも潰してやる。それで生きていけよ、クズ共』


大人「そして君が妹さんを殺したのはその三日後だったね」

男「はい」

大人「どうしてかな。復讐は終わったのに。晴れて妹さんのことだけを思って付き添えただろうに」

男「愛しているから」

男「極々普通に、愛しているから」

男「あんな妹は見ていられませんでした」

妹『おかえり、兄ちゃん』ニコッ


男『……どうした?』

妹『なにがー? いつも通り、元気な妹だよっ』

男『だから聞いてるんだ』

妹『もう、どうしたは兄ちゃんの方だよ?』

男『……どうなってるんだ?』

妹『あ、そうそう、御飯作ったよ。食べよう?』

男『う、うん』


男「妹はてっきり記憶喪失になったのだと思いました」

男「とても辛い目に合うと一部分だけ記憶が失くなる。そういうのがテレビの中だけではなく、現実にあるものだと知っていたので」

大人「どうして知っていたのかな」

男「なにかで調べた時があったんです。多分、他愛のない理由で」

大人「なるほど。でも、妹さんは記憶を失っていなかった、だね?」

男「はい。妹ははっきりと覚えていました。なにもかも、忘れてませんでした」


妹『お腹いっぱいになった?』

男『うん。いつもながらお前の御飯は美味しいな』

妹『えへへー、作った甲斐があるってもんだよー』

妹『それじゃあしよっか。するでしょ?』

男『なにをだ? ゲームか?』

妹『今日はそういう感覚でするの? いいけど、どんなゲームなのかなぁ』

男『マリカーでいいんじゃないか?』

妹『もう、とぼけてるの? 兄ちゃん』

妹『あの日みたいに私をいっぱい虐めてくれるんでしょ?』

男『……え?』


妹『焦らさないでよぉ、兄ちゃん。私ね、兄ちゃんにだったらなにされてもいいんだよ』

妹『そりゃ初めてだったから痛かったし恐かったけど、でも、兄ちゃんだからいいんだ』

妹『嬉しかったな、兄ちゃんがほんとに意味で受け入れてくれて』

妹『だから兄ちゃん、今日も兄ちゃんのおちんちんでいっぱい虐めてよぉ』

男『……おま、え』

妹『兄ちゃんが嫌がってもだめだよー? 私はもう、したくてたまらないんだから』

妹『兄ちゃんもほんとはしたいんでしょ?』サスッ

男『おい! やめろ!』

妹『うああああああごめんなさいいい! うまくっ、うまくするから殴らないで! お願い! 怒らないで!』

男『……殴るわけないだろ』ボソッ


妹『でも兄ちゃんはあの日、私をいっぱい殴ったじゃんか』

妹『下手くそって。もっと喘げって。殴ったじゃんか』

妹『気持ちよくなる薬だって注射して、やっぱり殴ったじゃんか』

妹『あ……そっか。あれは殴ったんじゃなくて、愛のムチだったんだね。ごめんなさい、勘違いして、ごめんなさい、許してください、ごめんなさい』

男『……もういい、もういいから、なにもしなくていいから』

妹『どうして!? 兄ちゃんは私を愛してるって言ってくれたじゃんか! だからああいうことするんだって教えてくれたじゃんか! もう嫌いになったの!? 私が下手くそだから!? うまくするよ! うまくするから! 嫌いにならないでよぉ』カチャカチャ

男『やめ、ろ……』


妹『あれ? 兄ちゃん、この前見たときはもっとおっきかったのに、なんか柔らかいし……はむっ』チュパッ グポッグポッ ジュルルレロレロ

男『う……うぐ……』ポロポロ

妹『おかふぃいなぁ、おっきくならないぉ?』 ジュパジュパグジュッ チュパッレロ ジュルルル

男『妹……』ナデナデ

妹『ふぃ?』

男『……愛してる』ナデナデ

妹『あふぁふぃも愛してるよぉ兄ちゃんっ』

男『ありがとう』ギュゥウ

妹『かっ――あっ……』


男『辛かったな』

妹『あ……にっ……』

男『苦しかったな』

妹『……ちゃっ……あっ……』

男『ごめんな』

妹『……んっ……だ……っ』

男『なにもできない兄ちゃんで』

『……っぃ……ぅ……っ』

男『ごめん』

男『ごめんな』


『』

男『……ただいま、妹』

『』

男『いま、楽にしてやるから』

『』

男『いま、その汚い体から逃がしてやるから』

『』

――ギコ ギコ ギコ ギコギコギコギコギコギコ

ブシュッゥ ギャリギャリィ

――ギコ ギコ ギコ ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ


――コトコトコト グツグツグツ

男『そういえば言ってたっけ。味付けに困ったらコンソメの素を入れればいいって』ポチャン

――コトコトコト グツグツグツ

男『お前の話、聞いててよかったよ』

――コトコトコト グツグツグツ

男『でも俺はもっとお前と話してたかったよ』

――コトコトコト グツグツグツ

――コトコトコト グツグツグツ


肉 を 三日 で 食

骨 を 三日 で 食

目 は 最後 に 食

目 は 最後 に 食




大人「どうして食べたのかな」

男『心は天国に。体は俺が貰う』

大人「美味しかった?」

男『お前は世界で一番美味しいよ』

大人「悔いはない?」

男『お前が隣にいないのは寂しいな』

大人「君は至って正常だね」

男『ごちそうさまでした』

大人「最後にもう一度だけ聞くけど、君は妹さんをどう想っている?」

『愛しているからな、これからもずっと』

男『俺が死ぬまでは、ずっと』


fin