男「ねえ友人。あの女の子って綺麗だよね」

男友「なんだよお前、今更かよ。あいつは有名人だぞ?」

男「へえ、そうなんだ。あんなに綺麗なんだもんね」

男友「いや、それもあるんだが・・・知らないのか?“氷の女王”ってあだ名」

男「なにその厨二病」




男友「誰がつけたか解らんが、そんなあだ名だ。今まであの女に告白した男は五人いるらしいが、そのどれもが再起不能となっている」

男「いつから恋愛は生死をかけた勝負になったんだろう」

男友「しかし再起不能なんだと。その内の三人は女性不信になり男色の道へ。あと一人は引きこもりになり、最後の一人はストーカーになったらしい」

男「それはもう、彼女が異端者に好かれる人だとしか思えない流れだ」

男友「いやいや、生前は普通の高校男子だったらしいぞ」

男「彼女を殺人鬼みたいに言わないでよ」

男友「生まれ変わった、って意味では同義だ。なんだお前、あいつに惚れたのか?」

男「うーん、惚れたかどうかはまだはっきりとしないんだけど、いいなあ、って」

男友「そうか。友達として忠告しておこう。やめとけ」

男「やめておけたらいいんだけど、ねえ」

男友「女なんて星の数ほどいるぞ?」

男「でも友人もいつか思うだろうね。女は星の数ほどいても、こいつは一人しかいない、って」

男友「なんだ、惚れてんじゃないか」

男「どうやらそうらしいね。よし、そうと決まれば告白してくるよ」

男友「おいおい、まずは仲良くなってからだろ」

男「僕そういうの苦手だから、いってくる」

男友「やれやれ。まあ、気をつけてな」

男「告白に行く友達にかける言葉じゃないね、それ」



男「あの、女さん」

女「……誰?」

男「男っていいます。あの、僕、女さんが好きです」

女「あらそう」

生徒A「おいあいつ氷の女王に告白してるぜ」
生徒B「命知らずがいたもんだ。ってか今昼休みの教室だよな。ある意味凄いな」

女「……貴方のせいで無駄に注目を浴びてしまっているのだけれど。不快だわ」

男「すみません。でも、こういう気持ちを貯めておくのは精神衛生上よろしくないので」

女「時と場所を選びなさい、と私は言っているの」

男「はい。じゃあ、きちんと告白をしたいので、今日の放課後、少しよろしいですか?」

女「嫌よ」

男「?」

女「今のが答えよ。告白、ということは交際を申し込むつもりなんでしょう?だから答えたわ。嫌、って」

男「交際はまだ早いですよ。僕は女さんのことをなにも知らないし、女さんも僕を知らないし」

女「そう、じゃあなに?」

男「まずは友達になってください」

女「それも嫌」

男「どうしてですか?」

女「友達がいらないから。一人が好きなのよ、私」

男「じゃあ恋人になりましょう」

女「自分で言った言葉を覚えていないの?貴方」

男「友達が駄目なら、一歩歩み寄ろうかと」

女「私が急速で後進しているのに行進しないでちょうだい」

男「後進と行進をかけたんですね。わあ、面白いなあ」

女「……//今のは忘れなさい」

男「はい忘れました。それなら結婚しましょう」

女「私はなにも貴方に常識を忘れなさいと言ったわけじゃないんだけど?」

男「恋人でダメなら、もう一歩
女「追い越してどうするのよ。はあ……面倒臭い人ね。ストーカーはもう間に合ってるの。これ以上はいらないわ」

男「ストーカーがいるって噂、本当なんですか?」

女「酷い被害に合っていないから警察に届け出たりはしていないけれど、本当よ。今も教室のドアに隠れてこっちを覗いているわ」

男「ああ、彼ですか」

女「放っておけばいいわ。どうせなにもしてこないのだし」

男「・・・それはいくらなんでも舐めすぎですよ」

女「舐める?なにを?」

男「高校生男子の愛の深さを」

女「……は?」ゾワァ

男「早急に、とは言いませんが、上手に相手しないと」

女「といってもね。下手に扱って酷くなっても困るのよ」

男「じゃあ僕が護りますよ」

女「……今の発言で身に染みたわ。私は貴方が嫌い」

男「嘘じゃありません」

女「二十四時間護り続けるつもり?」

男「年中無休で護り続けます、というのは常識的に無理なので」

女「貴方に常識があったのね」

男「学校にいる間と登下校時は護りますよ」

女「……好きにしてちょうだい」

男「はい」ニコ

女「遠巻きストーカーの次は、近距離ストーカーか」ハァ



男友「どうだったんだ?」

男「学校にいる間と、登下校時に傍にいることは許されたよ」ニコ

男友「お前、速攻で毒されてんな。高校生の付き合いで許可を得たことに喜びを感じるなんて」

男「でも、話してみて解ったよ。僕はあの人が好きだ」

男友「へえへえ、幸せそうでなによりだな」


放課後

男「今日はこのまま家まで一直線ですか?」

女「そうよ」

男「ではお供しますね」

女「……ずっと傍にいられると流石に鬱陶しいわね。なんで貴方、敬語なの?」

男「どうしてでしょうね。女さんが気品に溢れているからじゃないでしょうか」

女「溢れてないわよ。そんな教育も受けていないし。敬語はやめて」

男「うん、解った。改めてよろしくね、女さん。そっか、こうやって距離は近づいていくんだね」

女「先に言っておくけれど、これ以上近づくことは生涯許さないわよ」

男「やった、一生傍にいてもいいんだね」

女「どんなポジティブっぷりなのよ」

男「女さんはどうして一人でいることが好きなの?」

女「昔友達に裏切られて、とかそんなありきたりな事情はないわよ。普通に一人が好きなだけ。煩わしいのよ、人といることが」

男「へえ、女さんは優しいんだね」

女「どこをどう解釈すればそうなるのか理解不能だわ」

男「人の気持ちが解らなくて煩わしいんでしょ?相手を傷つける可能性もあるから。付け加えるなら、人付きあいが上手じゃないことを自分自身が解っている。だから人から遠のく、んじゃないの?」

女「……妄想するのは勝手だけど、私の人物像を私に押し付けないでね」

男「うん、解った。女さんは優しいねえ」

女「口に出さないで」

男「ぼんばばんばばばびいべえ」

女「口に閉じたままなら言っていいという意味ではないわ」

男「だよね、はは」


翌日

男「ねえねえ女さん。なんの本を読んでるの?」

女「小説よ」

男「誰が書いたの?」

女「伊坂幸太郎」

男「へえ、意外だな。女さんは太宰治とか京極夏彦とかフィリップ・キンドレド・ディックとかを好むと思ってたよ」

女「統一性がないようであるわね。要するに、アングラ趣味と言いたいのね」

男「どちらかというと、偏屈な文学少女と言いたいんだけどね」

女「褒めてないわよね」

男「(褒めてもないけど)けなしてもないよ」

女「行間を読ませるとか面倒なことを一般生活でさせないでちょうだい」

男「あはは、バレちゃった」

女「貴方は…………なにを読むの?」

男「え・・・質問してくれたの?女さんが僕に?やった!」

女「今後そういう鬱陶しい対応をしたら階段から蹴り落とすわよ」

男「そうして女さんに生涯消えない傷を与えて貰えるんだね」

女「ポジティ……ただの変態じゃない」

男「それはさておき」

女「さておけない話題だけれど」

男「僕はエンターテイメント小説とかライトノベルとか、躍動感のあるものは読むかな」

女「ふうん、心理描写過多が好きじゃないわけね」

男「嫌いじゃないんだけどね。元々、本より映画派だから」

女「そう。映画派なの。そう」

男「・・・?」

女「ふうん、映画が好きなのね、あらそう」

男「うーん・・・」

女「映画、映画ねえ。映画より小説の方が好きだけれど、映画ねえ」

男「あ」ピコーン

男「今週の日曜日、もしも女さんが暇なら、地球が滅亡することを厭わないぐらいに暇だったら、映画を見に行かない?」

女「そこまで暇じゃないけれど、暇なことに違いはないわね。映画によるわ」

男「僕は映画が好きだからどんな映画でもいいんだけど、映画館で映画が見たいんだよね」

女「あらそう。そういえば先週からアクション物だけれど洋画が公開しているわね」

男「あ、それ見たいなあ。とっても見たいなあ」

女「ふうん、どうしても見たいというのなら付き合ってあげてもいいけれど」

男「どうしても見たい」

女「仕方ないわね、行きましょう」

男「やったね!」

男「(女さんって……案外扱いやすいかも)」


日曜日

男「こんにちわ、女さん。今日も綺麗だね」

女「貴方、実はイタリアで育ったんじゃないの?」

男「生粋の日本人だよ、僕は。先祖が縄文人な位」

女「さぞ長い家系図でしょうね」

男「よし、行こう」

女「あまり気にならないことだけど、一応聞いておくわ。いつからいたの?」

男「昨晩からだよ」

女「冗談よね」

男「もちろん」

女「そうよね」ホッ

男「(実際は三時間前からだけどね。昨日は緊張し過ぎて早寝しすぎちゃった)」


スクリーン「どどん!どどどどん!どどどどん!ぱ~~~」ドヤァ

女「……」キラキラ

男「(やっぱり。友達がいないから映画館に来る機会がなかったんだ。一人で映画館は難易度高いよねえ)」

スクリーン「だだん!だだだだん!だだだだだん!ちゅどーん!」ドヤドヤァ

女「……」キラキラ

男「(それにしてもこの映画館、なんかムカつくな。まあ、女さんが楽しそうだしいいか)」


女「まあまあだったわね」

男「そうだね。ありきたりなアクション物だったね」

女「そうね」ショボン

男「(映画の後だからかな?女さんの感情が読み取れやすいや)でも、だからこそアクションに力が入っていて、映画館で見る作品としては素晴らしかったね」

女「そ、そうよね」キラキラ

男「(感情的な女さん、可愛いなあ)そうだ、女さん。このままお開きというのも寂しいし、ご飯とかどうかな」

女「ええ、構わないわ。行きましょう」

男「なにが食べたい?」

女「……あれ」

男「ミャクドナリュド?」

女「ええ、嫌いじゃないのよ」

男「へえ、意外。うん、いいね。行こう」


男「ねえ、女さん」モグモグ

女「うん?」チュー

男「ちょっとこれは問題があるような気がしてきたよ」

女「なにが?」

男「例のストーカー君。今日もいる」

女「当たり前でしょう。ストーカーなのだから」

男「僕はてっきり、学校の日だけだと思っていたんだけど」

女「年中無休よ、彼。なにもしてこないからいいけど。それに、言いつけは守るようだしね」

男「言いつけ?」

女「告白された時にこう返事をしたの。私の半径五メートル以内に近づかないで、って」

男「ああ、確かに五メートル以内にはいないね」

女「だから放置してるのよ。でも、私には解らないわ」

男「なにが?」

女「普通、そんなことを言われたら嫌いになるでしょう?彼にしろ、貴方にしろ。私、貴方にきつい言葉も投げかけてるつもりよ?」

男「そうかな?まあ、女さんの魅力を考えれば、簡単に諦められないという気持ちは理解できるけどね」

女「私のどこに魅力があるのよ。少なくとも、貴方たちは私の外見に釣られて告白してきたんでしょう?」

男「外見に滲みでる内面ってあると思うな」

女「解らないわ、そんなの」

男「だよね(それが解れば女さんは友達を作るんだろうし)」

男「だけど、少し話しただけでも相手がどんな性格なのかって、想像できるでしょ?」

女「想像を相手に押し付けるのは私の意思に反するわ」

男「それは難しいと思うよ。誰だって、その人に対しての自分しか見せないんだから」

女「それでは正しい関係なんて築けないじゃないの」

男「僕はそれが正しい関係だと思うよ。母親に見せる自分、教師に見せる自分、恋人に見せる自分、ゆくゆくは子供に見せる自分、上司に見せる自分。全部異なってくると思うし、そうすべきだと思うから」

女「……そうね。上司に対して母親と同じように振舞っては問題があるわね。貴方、意外に物事を考えているのね」

男「女さんといると考えさせられるんだよ」

女「なんだかそれ、私が面倒臭い人みたいね」

男「違う違う、褒めてるんだよ」

女「あらそう」

男「ねえ、女さん、この後は用事とかある?」

女「特にないわね」

男「それじゃあ、本屋さんに行かない?」

女「構わないわ」


その後、本屋で僕たちは楽しく(僕が楽しかっただけじゃないと信じたい)過ごした。
本好きが本屋にいれば、好きな作品などを教え合って楽しいんじゃないか?という友人の提案には感謝しておかなくちゃね。


翌日の放課後

男「ごめん、女さん。今日は委員会の用事があって、どうしても帰るの遅くなってしまうんだ。本当にごめん」

女「……貴方が勝手に護ると言い出して、勝手に付いてまわっているだけなんだから、謝る必要はないと思うのだけれど」

男「約束を守れなかったことに対して謝ってるんだよ。登下校時と学校にいる間は護るって大口叩いたのに」

女「委員会なら仕方ないじゃないの。仮にこれが会社だとしたら、仕事で残業だった、とかになるわけでしょ?そんなことで約束を破ったなんて思わないわよ」

男「うう、本当にごめん。ありがとう!明日の登校はちゃんと迎えに行くから!」ピュー

女「それも貴方が勝手にしただけって、あら、急いでたのね。さよなら」


~~~~~

女「……」

女「……」

女「……」

女「……」

女「……」

女「……」

ブロロロロロロロ キキィー 

?「おらあ!乗りやがれ!」

女「なにするのっ!こらっ!やめっ――」

バタン ブロロロロロロロ


ストーカー「あ、あわ・・・あわわ・・・っは」

ピッピッピッピッピッピ プルルップルルッ

ストーカー「お、女さんが、さ、拐われた!」

携帯『~~~~~~~~~』

ストーカー「く、車のナンバー?覚えてる!」

携帯『~~~~~~~~~』

ストーカー「わ、解った!警察に電話する!き、君は?」

携帯『~~~~~~~~~』

ストーカー「う、うん、解ったよ」

~~~~~

男「どこだ!どこにいる!」シャカシャカ

男「くそ、この発信機精度低すぎるんじゃないか?もっと高いの買っとけば良かった」

男「半径百メートル以内、とか!意外に広い!しかもここどこなんだ!そうだ!」

ピッピッピッピッピッピ プルルップルルッ

男友『なんだよハッピータイム邪魔しやがって』

男「友人のオナニー事情なんざ今はどうだっていいよ!」

男友『なんだ、切羽詰まってるな。どうした?』

男「詳細は今度話す!今からメール送るから、この中心点から半径百メートル以内のどこに人がいるか解らないかな?」

男友『人?詳細は今度でいいけど、人なんざそこらにいるだろ。どんな人を探すんだよ』

男「不良に拐われた女の子!」

男友『事件じゃねえか。そういうのは警察に――って、もう連絡してるわな。待て、検索すっから』

男友『メール来た。ああ、この辺りな。その辺りで監禁できそうな場所は・・・百メートル以内なら廃工場があるからそこじゃね?場所は返信しといた』

男「ほんっとにありがとう!」

男友『いいって、俺とお前の仲だろ?だから今度、お前が大切にしている秘蔵の“爆乳ツンデレ娘、ぴゅーっと吹くシオー”ちょうだいな』

男「“最終性器アナル”もセットであげるよ!それじゃ!」

男「よし、ここだな!」シャカシャカシャカ


~~~~~

不良A「生意気な女だな、こいつ」

?「だろ?一回痛い目合わせねえとよ」

女「……クズね」

?「ああ!?」

女「私にフラれてからストーカーになったのは二人いるけれど、彼らは今思えば可愛いものね。私に危害を加えなかったのだから」

フラレ男「うるせえ!てめえ、人のこと散々ボロかすに言いやがって!」

女「そうっだったかしら?私は確か“人様に迷惑をかけることが好きな人間を人間とみなしていないの。今すぐ鏡を見て猛烈に反省してから、便器に顔を突っ込んで溺れ死になさい”と言っただけだったと思うけれどね」

不良B「よくもそんな酷え言葉を思いつくもんだ」

フラレ男「だろ?ったくよ、腹立つぜえ。まあそれもここまでだな。お前はこれから、俺らにヒーヒー言わされるんだからよ」

女「なにがあっても、私が貴方たちにヒーヒー言うことなんてないわ。たとえ陵辱されたって、私は貴方たちが大切にしている汚い性器を噛みちぎってあげる」

フラレ男「黙ってろ!」バチンッ

女「……っ」キッ

不良A「もうさっさとやっちまおうぜ。俺、こういう気の強い女がヒーヒー言うの好きなんだよな」

不良B「どんな女でもヒーヒー言っちまう良薬がここにあるけど、使っちゃう?使っちゃう?げへへ」

女「く、薬……っ!?」ブルルッ

フラレ男「そうだよ薬だよ。気持ちよくなっちまう薬だ!楽しみだなあおい!お前がヒーヒー言う声がよお!」

女「……」

女「……」

女「……言ったじゃない!」

フラレ男「あ?」

ガラガラガラ

フラレ男「誰だ!?」

男「どうも、ストーカー二号です」ハァハァ

女「男くん!」


不良A「なんだてめえ。お呼びじゃねえぞ?」

フラレ男「こいつ・・・女とこの前デートしてやがった奴だ・・・」

不良B「ってことは女はこいつのちんちんしゃぶったわけだ」

フラレ男「はああああああああああああん!?こいつが良くて俺が駄目たあどういう理屈だあああ!」

女「そんな下品なことはしてないし、あんたよりも彼の方が百倍マシなのは法律で証明できるわ」

男「少なくとも僕は犯罪をしないつもりでしたからね。でも・・・女さんを護れるなら殺人鬼で構わない」

不良A「かっこつけてんじゃねえぞてめえ」

不良B「なんかムカつく野郎だなあ、ボコにすんぞ?げへへ」

男「・・・は?」カラン

不良B「鉄パイプ!?」

男「いやいや、本当に、ねえ。もし女さんに何事もなければ、警察が来るまで時間稼ぎでもしていようかと考えてましたよ。何事もなければですけど」ジリッ

男「でも、なんですか、これ。女さん泣いてるじゃないですか。頬が赤いのはなんですか。髪が乱れてるのもなんですか。服にシワがよってるじゃないですか。貴方たち、女さんになにをした!」

不良B「こいつ、キレてんじゃね?」

不良A「・・・みてえだな」

フラレ男「な、なにビビってんだよお前ら!三体一なら!」

不良B「馬鹿いうなって。キレた野郎を相手にしたら駄目ってばあちゃんの遺言だ」

不良A「三体一なら勝てるだろうけどよ、最初の一人は頭割られんぞ?」

不良A、B「ってなわけでさいなら」ピュー

フラレ男「おい!待て!!く・・・くそったれ!」

男「なんとも想いやりのあるお友達ですねえ」

フラレ男「くそ!くそ!くそおおおお!」

男「はあ、そうですか。向かってきますか。ああそうですか」

男「じゃあ死ね」

女「男くん!」

男「」ビクッ バキィ

フラレ男「な、なんだよ、けけ。見掛け倒しが」

男「うう・・・なんですか、女さん」

女「人殺しも、過剰防衛も認めないわ。貴方がいなくなったら、これから私のことを誰が護るのよ!」

男「はは・・・嬉しいなあ。女さんに、護ってもいい許可が貰えた」

フラレ男「ナイト気取りかよ・・・くそ、俺だって、俺だって!」

男「ねえ、貴方。貴方は女さんのどこが好きなんですか?」

フラレ男「ああ!?んなことどうだっていいだろうが!」

男 「どうでもよくありませんよ。僕はね、女さんが大好きです。綺麗な容姿が好きです。凛とした佇まいが好きです。気高い雰囲気が好きです。優しい心が好きで す。実は友達が欲しいのに、恥ずかしがり屋で臆病だから一人でいる女さんが好きです。映画で胸を弾ませる女さんが好きです。本を語る女さんが好きです。一 つ一つ読み込んでいるのも好きです。自分の考えがあるのが好きです。人の考えを聞き入れられるのが好きです。はっきりと物事を言えるのも好きです。裏腹な 言動が好きです。冷たい言葉が好きです。冷たくてしてしまって後悔している女さんが好きです。実は映画館に行くのが楽しみで、中々眠れなかった女さんが好 きです。大好きです。本当は優しい女さんが大好きです。なにもかもが好きです」

男「それで、貴方は女さんのどこが好きなんですか?」


フラレ男「・・・女、将来的にこいつの方が危険なんじゃねえのか?」ゾッ

女「いいや、彼は未来永劫危険人物にはならないわ。それでも私を立ててくれるだろうから。彼の想いに彼の妄想の私が入り込んでいることは気味が悪いけれどね」

フラレ男「そんなのてめえの想像だろうが」

女「あら、知らないの?人は対象に想像されて初めて成り立つのよ」

フラレ男「・・・っけ。興ざめだ。煮るなり焼くなりしやがれ」

男「じゃあ、警察に行ってください。罪を償ってください。そして、綺麗な体になって、その時は友達になりませんか?」

フラレ男「はあ!?」

女「……正気?」

男「もちろん。同じ人を好きになった方なんです。気が合わないわけがないでしょう?」

フラレ男「・・・んなわけねえだろ。女・・・悪かったな」

女「構わないわ。許さないから」

フラレ男「へえへえ。ったく、どこで間違っちまったんだか」テクテク


男「女さん、大丈夫だった?」

女「当たり前じゃない」

男「そっか。それなら良かった」ギュウ

女「……なにをしているの?」

男「抱擁だね」

女「とても汗臭くて不快なのだけど、離してくれない?」

男「女さんの震えが止まったら離そうかな。ところで女さん」

女「なに?」

男「ええと、その、あの」

女「……」

男「そうだな、ううんと」

女「……」

男「なんだったかなー」

女「……ありがと」

男「へ?」

女「……なんでもないわ」



翌日放課後

女「そういえば昨日、どうして解ったの?」

男「ああ、ストーカー君とは電話番号の交換をしてたから」

女「いつの間に……」

男「正直な話、タイムリーだったよ。女さんの身に危険が及ぶかもしれない、という情報を知ったのは先週末だったし、番号の交換をしたのは月曜日の昼だったから」

女「どこからそんな情報を仕入れたのよ」

男「女さんは敵を作りやすそうだからねえ。今までにどんな男が告白したのか調べたんだよ。そしたらC組の不良もばっさりフッたとか。ちょっと危ないんじゃないかな、なんて」

女「想像したわけね」

男「そういうこと。ストーカー君は、最初こそ不信だったけど、日曜日に聞いた限りで安全牌だと思って、保険としてね」

女「で、どうやって私の居場所が解ったのよ」

男「え?」

女「車のナンバーで追跡、とか一般人には無理でしょう?携帯のGPSも貴方では無理だろうし、どうやったの?」

男「僕はいついかなる時でも女さんがどこにいるか解る超能力があったりなかったりするんだよ」

女「矛盾してるじゃないの。もういいわ。ろくなことじゃないんだろうし」

男「へへ。とりあえず、これで一見落着、ということで、僕と結婚しないかな?」

女「走り幅跳びで宇宙まで記録更新した勢いね。そのまま海王星まで突き進んでちょうだい」

男「よかった、太陽系にいることは許されるんだね」

女「相変わらずのポジティブっぷりね。はあ、まあ、そうね」




女「……友達になら、なってあげても構わないけれどね」
女(どうして素直になれないんだか、私は)

男「やった!これで結婚まで一直線だね!」

女「やっぱり冥王星まで行ってちょうだい」


...
To be continued.


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どこかの方が漫画にしてくださいました。
ありがとうございます。
女「私は貴方が嫌いだけれどね」漫画版

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